セラピストとして独立して、最初に事務所を持った場所が表参道です。
それからずっとこの街で暮らしています。
移ってきたころはまだ体力がなくて、参道の往復の2キロの道のりを歩くのが精一杯だったので、参拝はお客様をご案内するような特別なときだけのものでしたが、
「近くにお部屋がみつかったら、毎日参拝にいけます」
と参拝するたびにお祈りしていました。
ご縁あって、明治神宮の近くに引っ越してもう5年目になるでしょうか。
神様とのお約束ですので、東京にいる日は毎日参拝するようにしています。
毎日参拝させていただくようになって、たくさんの気づきがありました。
この森が、100年も前にすでに都市化していたこの街の未来のためにと、
多くの人たちのまごころによって、人の手によってつくられた森であること。
森林学者の本多静六先生が、「参道は杉並木がふさわしい、藪はよろしくない」という反対意見のなか、
身分を賭して、時の総理大臣に掛け合い、この照葉樹林を計画したこと。
その思いを実現するために、今も、今までも、関わる人すべてが思いをひとつに働き続けていること。
そして、この森が日々語りかけてくれる、自然の循環という場に込められたたくさんのメッセージ。
心のざわつくときも、孤独を感じるときも、
「100年も前に、今ここにわたしが来ることを考えてくれていた人がいる」
と考えるだけでとてもあたたかな気持ちになれます。
渋谷というビルに囲まれた大都会にありながら、
外の世界の喧騒を忘れ、自然に溶け込む癒しの時間を持てる場所。
子孫が困らないようにと、体の毛を抜いて木々を植えたという、日本の神様、素戔嗚尊(すさのおのみこと)の思いそのままに、
この森は、都会のざわめきに疲れたわたしたちを、いつもやさしく守ってくれているような気がするのです。
100年も昔に、未来にここに立つわたしたちのためにと考えた、人の手によって。
人間の存在は、自然の脅威のようによく語られますが、
「人の意志とその智恵は、豊かな森も生み出せる。」
そのことを、この森に関わってきたすべての人たちが、この明治神宮の森を通して、証明しています。
明治天皇 御製
久方の 空はへだても なかりけり 地(つち)なる国は 堺(さかい)あれども
明治神宮の願いは世界平和です。
「言挙げせず」
の、神道の精神で、声高に語られることはありませんが、
その大御心は100年の時を越え、この森を通じて届けられています。